四海俳諧俳歌詞
(遊覧船ユリシーズ号の洋上句会)

長谷部さかな 著

 ID


全90件 <更新> ページ移動 ⇒ [ ↓ 3 4 5 6 7 8 9 終了]

PAGE 1 (1〜10)


<し> 子規忌
   2019/12/3 (火) 07:47 by Sakana No.20191203074723

<し>子規忌かと四海俳歌詞とか聞きし

しきき【子規忌】

正岡子規の忌日。9月19日。糸瓜忌。獺祭忌。 
                               (大辞林)

「さあ、四海俳諧詞の句会をはじめよう」
「子規忌は9月19日です。季節がずれているの
ではないでしょうか」
「漱石忌でもよい」
「漱石忌は12月9日忌、まだ少し早いと思いま
す」
「12月3日が忌日の俳人はいないのか」
「忌日ではありませんが、1882年のこの日に種
田山頭火が生まれています。うしろすがたのし
ぐれてゆくか、という句が有名です」
「芭蕉の時雨忌は陰暦10月2日だ。山頭火の句を
時雨忌とするわけにはいかない」



み 道のべの木槿
   2019/12/1 (日) 08:11 by Sakana No.20191201081122

み 道のべの木槿は馬に喰れけり      芭蕉
  道のべの蛙尿する馬の面       古魚

かえるのつらにみず【蛙の面に水】

〔蛙の面に水をかけても平気でいることから〕 
どんな仕打ちをされても、全く平気でいること。
しゃあしゃあとしているさま。蛙の面に小便。
                (大辞林)
「馬は道のべの木槿を喰ったり、蛙の面に水
をかけたりしますね」
「そのしっぺ返しに蛙は馬の面にしょんべん
をかけたが、馬はどこ吹く風かと、平気の平
三」
「それだと、馬の面に水、ですね」
「馬耳東風」


<み> 味覚の秋
   2019/11/19 (火) 09:17 by Sakana No.20191119091746

<み>

味覚の秋や墨の水焼きあの具佳味

いかのすみ 〈烏賊〉の墨

  イカの肛門部背面にある墨汁*(のう)に
貯えられている黒い液。危険が迫ると噴出し、
敵の目をくらまして逃げる。料理にも用いら
れる。(大辞林) 

「味覚の秋にイカの墨の水焼きは珍味だ」
「それはカラスミでの間違えているのではな
いでしょうか。カラスミなら、ボラなどの卵
巣を塩漬けし、塩抜き後、天日干しで乾燥さ
せたものです」
「いずれにしても味覚の秋だ。珍味、佳味を
つまみにして一杯飲むことができれば極楽、
それにまさる幸せなし」


め 名月や
   2019/11/12 (火) 08:29 by Sakana No.20191112082925

め 名月や北国日和定なめき         芭蕉
  寒月や迷亭苦沙弥定なき       古魚

 要するに、主人も寒月も迷亭も太平(たいへい)
の逸民(いつみん)(俗世間をのがれて隠れ住んで
いる人。官に仕えず気楽な生活を楽しむ人)で、
彼らはヘチマのごとく風に吹かれて超然とすまし
きっているようなものの、その実はやはり娑婆気
(しゃばけ/煩悩(ぼんのう))もあり欲気(よく
け)もある。競争の念、勝とう勝とうの心は、彼
らが日常の談笑中にもちらちらとほのめいて、一
歩進めば彼らが平常罵倒(ばとう)している俗骨
(ぞっこつ/卑しい気質の者)どもと、ひとつ穴
の動物になるのは、猫より見て気の毒の至りであ
る。ただその言語動作が普通の半可通(はんかつ
う/いい加減な知識しかないのに通人ぶること)
のごとく、文切り型の厭味を帯びてないのはいさ
さかの取り得でもあろう。
(夏目漱石『吾輩は猫である』)

「苦沙弥、迷亭、寒月という大平の逸民たちも今
はみな、あちらの世界の人になってしまいました。
諸行無常です」
「しかし、小説は今でも青空文庫で読める。『猫伝』
は不滅だ」
「もともとの題名は『猫伝』だったそうですね。
それを『吾輩は猫である』と偉そうに語る猫の話
にしてしまいました」
「西鶴曰く、大晦日さだめなき世の定めかな」
「今年はまだ、大晦日は少し早いようです」


<め> 名月
   2019/11/5 (火) 07:24 by Sakana No.20191105072411

<め>

名月は疎い街道八景目

  戸塚の梅雨。本郷の黄昏。神田の祭礼。柏木
の初雪。 八丁堀の花火。芝の満月。天沼の蜩。
銀座の稲妻。 板橋脳病院のコスモス。荻窪の
朝霧。武蔵野の夕陽。
 思い出の暗い花が、ぱらぱら躍って、整理は
至難であった。また、無理にこさえて八景にま
とめるのも、げびた事だと思った。そのうちに
私は、この春と夏、更に二景を見つけてしまっ
たのである。(太宰治『東京八景』)

「金沢八景だと思っていましたが、東京八景で
したか」
「金沢八景なら、洲崎の晴嵐、瀬戸の秋月、小
泉の夜雨、乙艫の帰帆、称名寺の晩鐘、平潟の
落雁、野島の夕照、内川の暮雪の八景だ」
「太宰治の東京八景の八景目は銀座の稲妻です。
銀座は疎い街道はありません」
「人間失格で錯乱していたから、一つずれて、
九景名の板橋脳病院のコスモスのつもりだった
のだろう」


ゆ 行秋や
   2019/10/29 (火) 07:30 by Sakana No.20191029073008

ゆ 行春や鳥啼魚の目は泪         芭蕉
  行秋やかひなき魚の目は泪      古魚

露通もこの港まで出で迎ひて、美濃国へと伴ふ。
駒に助けられて大垣の庄に入れば、曾良も伊勢より
来たり合ひ、越人も馬を飛ばせて、如行が家に入り
集まる。前川子、荊口父子、その外親しき人々、日
夜訪ひて、蘇生の者に会ふがごとく、かつ喜びかつ
いたはる。旅のものうさもいまだやまざるに、長月
六日になれば、伊勢の遷宮拝まんと、また舟に乗り
て 蛤のふたみに別れ)行く秋ぞ
             (おくのほそ道 大垣)

「おくのほそ道の旅、おつかれさまでした。収穫が
あったとすれば何か、教えてください」
「無!」
「それでは、何の甲斐もない旅をして魚の目に泪、
という残念な心境ですか」
「残念も無念もない。旅の初めは半年前、行春や鳥
啼魚の目に泪、だった。月日は百代の過客にして、
行交ふ年も又旅人也」


<ゆ>行々て
   2019/10/22 (火) 09:59 by Sakana No.20191022095935

<ゆ>行々て渋柿泣き伏して消ゆ消ゆ

しぶがき【渋柿】

  柿の品種のうち、実が熟しても甘くならず、
味の渋いもの。醂さわしたり干したりして渋を
抜いて食用とする。また、柿渋を採る原料とす
る。 [季]  秋。 (大辞林)

「行々て倒れ伏す寸前の人が甘柿を見つけてや
れ嬉しやと思ったら渋柿だとわかってがっかり、
という句のようです」
「行々てたふれ伏すとも萩の原、という曽良の
句の本歌取りのつもりだ」
「消ゆ消ゆ、と言いながら、未練たっぱりでは
見苦しい。早く消えてください」
「消ゆ消ゆ」


き 菊の香や
   2019/10/14 (月) 09:46 by Sakana No.20191014094654

き 菊の香や奈良には古き仏たち 芭蕉
菊の香や奈良には古き埃立ち  古魚

出典笈日記 俳諧・芭蕉(ばせう)

[訳] 折しも九月九日の重陽(ちようよう)の節句で、
飾られた菊の香りがあたりに満ちている。この古都
奈良では、寺々の古いみ仏たちが菊の香りに包まれ
ていらっしゃる。

鑑賞
菊の香り、古都奈良、古仏の取り合わせによって、
清らかで格調の高い雰囲気をかもし出している。
季語は「菊」で、季は秋。(学研全訳古語辞典)

「おそれおおくも仏像に埃が立っている罰当たりの句
のように思われますが」
「仏像ではない。奈良の旧街道に埃が立っているのだ」
「なるほど、古都奈良の旧街道を古仏ならぬ古魚さんが
とぼとぼと歩いている姿が目に浮かびます」





<き> 季意去った
   2019/10/8 (火) 07:20 by Sakana No.20191008072012

<き> 季意去ったかあてん手垢獺祭忌

だっさい【獺祭】

「獺祭魚」の略。かわうその祭り。 
              (大辞林)

「9月19日は正岡子規の忌日、糸瓜忌、獺祭
忌ともいう」
「子規はかわうそのような男だったのでしょ
うか」
「れっきとした武士の子だ」
「獺祭とはかわうその祭りです。まるで手垢
にまみれたかあてんのように、「獺祭魚」は
季意と離れすぎです」
「それが俳諧というものだよ」



さ 五月雨を
   2019/10/1 (火) 06:46 by Sakana No.20191001064627

さ 五月雨をあつめて早し最上川      芭蕉   
  五月雨をあつめて垂らす洟の水    古魚

さみだれ【五月雨】

〔「さ」はさつき、「みだれ」は水垂みだれの意という〕 
@ 陰暦五月頃に降り続く雨。つゆ。梅雨ばいう。長雨ながめ。
うのはなくたし。 [季] 夏。 《 −をあつめて早し
最上川 /芭蕉 》 
A 継続しないで、少しずつ繰り返すことのたとえ。 
「 −スト」 

「洟の水は汚い、みっともない」
「汚いはきれい、きれいは汚い」
「善は急げ」
「急がば廻れ」
「時は金なり」
「待てば回路の日和あり


ページ移動 ⇒ [ ↑ 3 4 5 6 7 8 9 終了] <照会>
 
四海俳諧俳歌詞(遊覧船ユリシーズ号の洋上句会) 長谷部さかな 著
 Copyright (C) Sakana Hasebe