四海俳諧俳歌詞
(遊覧船ユリシーズ号の洋上句会)

長谷部さかな 著

 ID


全84件 <更新> ページ移動 ⇒ [ ↓ 3 4 5 6 7 8 9 終了]

PAGE 1 (1〜10)


<ゆ>行々て
   2019/10/22 (火) 09:59 by Sakana No.20191022095935

<ゆ>行々て渋柿泣き伏して消ゆ消ゆ

しぶがき【渋柿】

  柿の品種のうち、実が熟しても甘くならず、
味の渋いもの。醂さわしたり干したりして渋を
抜いて食用とする。また、柿渋を採る原料とす
る。 [季]  秋。 (大辞林)

「行々て倒れ伏す寸前の人が甘柿を見つけてや
れ嬉しやと思ったら渋柿だとわかってがっかり、
という句のようです」
「行々てたふれ伏すとも萩の原、という曽良の
句の本歌取りのつもりだ」
「消ゆ消ゆ、と言いながら、未練たっぱりでは
見苦しい。早く消えてください」
「消ゆ消ゆ」


き 菊の香や
   2019/10/14 (月) 09:46 by Sakana No.20191014094654

き 菊の香や奈良には古き仏たち 芭蕉
菊の香や奈良には古き埃立ち  古魚

出典笈日記 俳諧・芭蕉(ばせう)

[訳] 折しも九月九日の重陽(ちようよう)の節句で、
飾られた菊の香りがあたりに満ちている。この古都
奈良では、寺々の古いみ仏たちが菊の香りに包まれ
ていらっしゃる。

鑑賞
菊の香り、古都奈良、古仏の取り合わせによって、
清らかで格調の高い雰囲気をかもし出している。
季語は「菊」で、季は秋。(学研全訳古語辞典)

「おそれおおくも仏像に埃が立っている罰当たりの句
のように思われますが」
「仏像ではない。奈良の旧街道に埃が立っているのだ」
「なるほど、古都奈良の旧街道を古仏ならぬ古魚さんが
とぼとぼと歩いている姿が目に浮かびます」





<き> 季意去った
   2019/10/8 (火) 07:20 by Sakana No.20191008072012

<き> 季意去ったかあてん手垢獺祭忌

だっさい【獺祭】

「獺祭魚」の略。かわうその祭り。 
              (大辞林)

「9月19日は正岡子規の忌日、糸瓜忌、獺祭
忌ともいう」
「子規はかわうそのような男だったのでしょ
うか」
「れっきとした武士の子だ」
「獺祭とはかわうその祭りです。まるで手垢
にまみれたかあてんのように、「獺祭魚」は
季意と離れすぎです」
「それが俳諧というものだよ」



さ 五月雨を
   2019/10/1 (火) 06:46 by Sakana No.20191001064627

さ 五月雨をあつめて早し最上川      芭蕉   
  五月雨をあつめて垂らす洟の水    古魚

さみだれ【五月雨】

〔「さ」はさつき、「みだれ」は水垂みだれの意という〕 
@ 陰暦五月頃に降り続く雨。つゆ。梅雨ばいう。長雨ながめ。
うのはなくたし。 [季] 夏。 《 −をあつめて早し
最上川 /芭蕉 》 
A 継続しないで、少しずつ繰り返すことのたとえ。 
「 −スト」 

「洟の水は汚い、みっともない」
「汚いはきれい、きれいは汚い」
「善は急げ」
「急がば廻れ」
「時は金なり」
「待てば回路の日和あり


<さ> さくらの夜
   2019/9/24 (火) 08:23 by Sakana No.20190924082323

<さ> さくらの夜田舎しかない世の落差

らく さ [1] 【落差】

@  流れ落ちる水の、高低二か所における
水位の差。水力発電の場合には、取水面と
放水面との水位差をいう。 
A  高低の差。二つのものの間にある差。 
                        (大辞林)

「さくらの夜に、田舎しかないと、少子高
齢化の世の落差を嘆き、詠嘆している句の
ようですが、具体的にどういうことでしょ
うか」
「水力発電の取水面と放水面との水位差を
詠んだ写生句かもしれない」
「たしかに水力発電所は田舎にしかありま
せんね」
「そんな田舎には花見客もいないが、さく
らの夜にはさくらが咲いている」



あ アラ海や
   2019/9/17 (火) 09:50 by Sakana No.20190917095039

てんが【天河】

あまのがわ。銀河。 〔日葡〕 
             (大辞林)

「聖人君子もたまには破礼句(ばれく)をつくって
みよう」
「これはひどい。俳諧狂句といえども品格がもとめ
られると思いますが、この句のどこに品格がありま
すか」
「隠れ季語『天河』がすべてを浄化している」



<あ>有りの実
   2019/9/10 (火) 07:36 by Sakana No.20190910073637

<あ>有りの実が梨かおかしな髪のリア

 あり の み [0][3]【有りの実】

  梨(なし)の実。[季] 秋。 〔音が「無
しに通ずるのを嫌って,対義の「有り」を用
いた語〕 

「シェイクスピアの『リア王』はもうろくし
 た老人の悲劇だ。高齢化社会に生きる老人の
参考になる」
 「リア王は禿頭で、髪が無いのですか」
 「無いといえば、ますます残酷な悲劇になる
 ので、<無し>を<有りの実>と称した」
 「<梨>という意味なら秋の季語ですが、
 <無し>なら無季の句になってしまいます」


て 手にとらば
   2019/9/3 (火) 07:40 by Sakana No.20190903074002

て 手にとらば消えん涙ぞ熱き秋の霜    芭蕉
  手にとらばはらりとおもきすすきかな 古魚

 長月の初、古郷に歸りて、北堂の萱草も霜
枯果て、今は跡だになし。何事も昔に 替りて、
はらからの鬢*白く、眉皺寄て、只命有てとの
み云て言葉はなきに、このかみ*の守袋をほど
きて、母の白髪 おがめよ、浦島の子が玉手箱、
汝が まゆもやゝ老たりと、しばらくなきて、 
手にとらば消んなみだぞあつき秋の霜
(松尾芭蕉『野ざらし紀行』)

「芭蕉と蛇笏、二人の名句を合成しただけの
句のようですね」
「ハイブリッド合成句であることは認めるが、
飯田蛇笏の句は「をりとりてはらりとおもきす
すきかな」だ。上五は<をりとりて>よりも<
手にとらば>のほうがよいと思う」
「私はやはり<をりとりて>のほうがよいと思
います」
「見解の相違だ。如何ともし難い」



<て> 添加物
   2019/8/27 (火) 07:16 by Sakana No.20190827071649

<て>添加物この酢数の子粒噛んで
        
かずのこ【数の子】

〔鰊かどの子の意〕 

ニシンの卵巣を乾燥、または塩漬けにした食品。
名を子孫繁栄に結び付け、正月などの祝儀膳ぜ
んに用いる。 [季]  新年。 (大辞林)

「市販のパック入り数の子製品は黄金色をして
いて、いかにも漂白剤を使っているぞという印
象を受けます」
「過酸化水素は漂白剤として食品添加物に指定
され、ニシンの卵つまり数の子への使用は許可
されている」
「でも、数の子に使用されている過酸化水素は
発がん性の疑いがあると言われていますが、大
丈夫ですか」
「酢か醤油で漬けた数の子の粒をよく噛んで食
べれば大丈夫だ」
「歯が抜けたので噛めません」
「発がん性は確かにあるので、歯の無い人はイ
ンプラントか入れ歯かの治療をしたほうがよい。
<煮る>、<焼く>という手もあるが」


え 榎の実散る
   2019/8/20 (火) 07:50 by Sakana No.20190820075015

え 榎の実散る椋の羽音や朝嵐          芭蕉
  木の実散る鳥の羽音や朝嵐      古魚

むく{椋}
@ ムクノキのこと。
A ムクドリの略。 
           (大辞林)

 榎の実は成らば成れ、木は椋の木、とも言う。
えのきの実が生ろうが何が成ろうが、むくの木
と一度言い出したら、その主張は何がなんでも
変えないという意で、強情で人の意見にしたが
わないことのたとえ。榎とムクが良く似ていることからきたもの。
                  (木のことわざ辞典)

「榎(え)の実を木の実とした理由は何ですか」
「現代の読者は<榎の実>といっても、伝わない。
<木の実>なら伝わるだろう」
「<椋>を<鳥>とした理由は?」
「<椋>といっても現代の読者は<ムクの木>か
<ムクドリ>かわからない。<鳥>なら伝わるだ
ろう」
「<椋の羽音>といえば、ああ、ムクドリの羽音
かと現代の読者にもわかると思いますが」
「榎の実は成らば成れ、木は椋の木、ということ
わざの深い意味も知ってほしい」



ページ移動 ⇒ [ ↑ 3 4 5 6 7 8 9 終了] <照会>
 
四海俳諧俳歌詞(遊覧船ユリシーズ号の洋上句会) 長谷部さかな 著
 Copyright (C) Sakana Hasebe